2009年下半期の芥川賞受賞作「ポトスライムの舟」
こないだの「乙女の密告」とかから比べるととても読みやすい作品。
世界一周旅行の163万円を貯めるために色々と苦心していくっていうお話。
色々なハプニングがあるんだけれども、最終的にボーナスでお金が貯まっちゃうっていうね、ちょっとズルい感じがした。
で、お金を貯めてく話なんだけれども、一ヶ月一ヶ月のお金を丁寧に丁寧に書いてるわけでもなく、一回の出費を全て記述してるわけでもなく。
非常にその辺が曖昧に、でも、適当なところでお金を引っ張ってきて記す。
これが非常に絶妙。
それで、まあ、お金の話だけれども、すべてお金ってわけでもなく、そこにお金を巡る色々な人の考え方があって。
いいね!って素直に思えた。
2009年上半期の芥川賞受賞作「時が滲む朝」
一言で表すと、中国の革命を起こそうとしている人の失敗をひたすら丁寧に描いていく話。
初めは英雄の物語かなとか思ったら、「おい!そこで英雄終了かよ!!」みたいなところがあって、なんかぱっとしない。
主人公達が非常につまらないところで英雄終了になるのが非常に残念。
だけれど、一人一人の(特に浩遠)心中が非常に丁寧に描写されてて、何を思ってるのか、直接的に書いてあるところは少ないけれども、よく分かることができた。
でも、やっぱり盛り上がりに欠けるよね・・・
2008年下半期の芥川賞受賞作「乳と卵」
喋ることをしない緑子、豊胸手術のことばかりを考える巻子、わりと一般市民なわたし、の三人が繰り広げるお話。
クライマックスが色々とやばい。
何がやばいって盛り上がりすぎて色々とほんとにやばい、いい意味で。
普通に読んでいても、場面が変わるときに緑子の手記が入るので、飽きることはほとんどない。
卵子とか月経とか、わりと日常的に扱わない話がぼんぼんと出てきて、自分は実際に女じゃないので、月経とかは保健体育で習ったレベルしかわからない。
けれども、この話はよくそのあたりが描写されていて、とても共感とか、できた。
全体的によくできていると思う。